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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


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そして、待ちかねていた日が訪れた。

ファンクラブの会報誌の企画で五人全員集められたのだ。
都内のスタジオに作られたセットで、みんなでご飯を食べようということらしい。

見知ったスタッフばかりでゆるゆるな現場。

にのが俺を現場に連れていくのは必然だった。



「ハルオってゆーの」


にのに嬉しそうに紹介された俺が、じとっと見上げた先にいるのは、驚いた表情のアイバチャンこと偽相葉。
あの日以来の対面だもんな。


よう、偽物。


俺は、じっと奴を見つめた。

リーダーたちはメイクに出かけていて、控え室には俺らだけだ。

にのは偽相葉に向けて、俺を抱っこし、こんにちは、と言った。


「……こいつ、前に迷子になった子じゃなかった?」

「うん」

「……え、なんで?」


戸惑う奴の声に、けっと思う。


おあいにくさま。
おまえに置き去りにされた自転車のかごから、自力で脱出してやったもんね。
ばーかばーか。

偽相葉は、心なしかひきっつた顔をしてる気がする。
俺は心のなかであっかんべーをしてやった。



「リーダーが偶然拾ってさ。俺が可愛がってたから……って、また連れてきてくれたの」

「飼うの?」

「もう飼ってる」

「マジで?仕事できてんの?」

「マネージャーに預けながら。ハルオ賢くてさ。全然鳴かないし、なんか俺のいうこと分かってんだ、不思議と」

「ふーん……そんな気になるんだ、そいつ」

「うん。なんか、ほっとけなくて。リーダーも同じこと言ってた」

「そっかー」


偽相葉が俺の頭を撫でようとするから、とっさにうなり声をあげた。


「……あれ。ハルオ?怯えてる?相葉さんだよ。怖くないよ」

「アイバです。よろしく。ハルオ」


うるせー!
俺に触るな!
ついでに、にのにも触るな!

俺はぷいっとそっぽをむいてやった。
ほんとは、指の一本でも噛んでやろうかとおもったけど、商売道具の体に傷をつけては、他のスタッフやみんなに申し訳ないから、耐えた。


「……変だな。ハルオ、あんまりこんな反応しないのに」

「いーよ。にのちゃん。俺、初めてだもんね」

「この人、動物大好きなんだよ。ハルオ?」


ほらほら、と、顔をつきあわされた。


こないだは、よくもやってくれたな。


俺は、じーっと偽相葉の顔を見つめた。

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