
キラキラ
第31章 イチオクノ愛
「……はぁっ……あいば……さんっ」
目を閉じて、軽く顎をあげたにのは、忙しく手を上下させて、一人で熱をあげてる。
会いたいのに、なかなか会えない寂しさを埋めるように。
自分の恋人のそんな姿に、コーフンすると同時に、言い知れぬ焦りが募る。
にのがこんなになってるのに、俺……こんな姿でなにしてんだろ……!
のんきに一緒に生活してる場合じゃねーじゃん!
後から考えても、犬になって、一番悲しくて悔しくなった瞬間であった。
だからといって、偽物がこいつを抱くのは許さない。
でも、現状、俺もこいつを抱くことは、……できない。
恋人が満たされない思いで、慰めてるのに。
ごめん……にの!!
俺、早くもとにもどる方法考えるから!
そんなただの犬の感情の揺れなんか、人間に伝わるわけはなく。
目の前のにのはもうすぐフィニッシュというところだ。
「……っ……くっ…………まーくん……んんっ」
小さな悲鳴とともににのの猫背が震えた。
……イけた……?
はぁ……はぁ……と、肩をゆらしながら、にのは潤んだ瞳でぼんやりしていた。
室内は、バスタブから立ち上る湯気と、にのの体から発散される熱で、けっこうな湿度と温度。
そんななか、彼が息を整うのを、俺は黙って見守る。
はあ……と、ひときわ深いため息をついて、にのがうつむいた。
俺はだんだん心配になってきた。
ね……にの。大丈夫?こんな暑い空間でそんな状態でいたら、逆上せちまうよ……?
俺が、クゥ……と声をかけたら、我にかえったにのは、のろのろとシャワーヘッドに手をかけた。
そして、そのまま黙ってシャワーを浴びて、残滓を洗い流しているようであった。
そうして、ゆっくり俺を振り返り、にのは、ばつが悪そうに微笑んだ。
「ごめん、ハルオ。ちょっと、できの悪い恋人思い出しちゃった」
………うん。
思い出してくれてありがと。
でも、寂しがらせちゃ恋人失格だね。
ごめん。
俺はだされたにのの指を、ペロリと舐めた。
