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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


一瞬、俺の名を呼んでくれたことが嬉しかったが、にのはそのままストンと深い眠りに入ったのか、頬を舐めても、腕を舐めても、ぴくりともしなかった。


……まぁ。これが日常なら、ほっとくしかないか。


俺はあきらめて、にのの 胸のなかで力を抜いた。


じっと、寝顔を見つめる。

乱れた長い前髪が、無邪気な寝顔を半分隠してて、それもまたちょー可愛い。
意外と長い睫毛や少しあいた口は、俺が思わずキスしたくなる萌えポイント。
あの茶色い目がぼけっと開いた瞬間が、いーんだよなぁ。

デレデレとしながら、にのの胸にぴったりくっついた。


洗いざらしの髪に、ケアもしない肌。
ラーメンを食って深夜までゲームをし続けるこいつは、ほんとにトップアイドルか?と、いうツッコミどころ満載の素顔。


でも、これが、にのなんだよね。
現場に入ったら、瞬時にアイドルモードに切り替えれるからこそできる生活なんだ。


とくんとくんという、にのの鼓動を感じながら彼の匂いと温もりに包まれてるのが不思議。
いつもは、俺が抱き締めている側だから、何もかもが新鮮だった。
犬ならではの役得ってやつか。


だけど……。


やっぱり触れることができないのは嫌だ。
この手で抱き締めることができないのは嫌だ。

……守れないのは嫌だ。


次は、にのは、いつ偽相葉と会うのだろう。


俺は、人間に戻れんのだろうか。


会いたくないけれど、すべてを知ってる可能性があるのが、あいつなら、あいつと会わなくちゃ、この状況が解決しないのは確かだった。

捨てられようが何されようが、犬の俺にはぶつかることしかできない。
とにかく…にのの傍から、絶対離れねーようにしないと。

俺は心に誓い、再び意識を手放した。

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