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キラキラ

第31章 イチオクノ愛


つか…………偽物か。


俺は、上機嫌でゲームのスイッチをいれてるにのを見て、改めて偽相葉への警戒心を強めた。


にのの傍にいることができるポジションを掴めたことはデカイ。

……でも、所詮犬は犬。
軽々と抱き上げられてしまうサイズは正直きついよな。
次にあいつに出会ったら、俺、またどこかへ捨てられそうな気がする。


でも、とにかく…邪魔するな、の発言の真意を探らなきゃどうにもなんないか……。

俺が本物だってあいつ分かってんもんなぁ。


「よっと……」


?!


ぐるぐる考え事をしていると、突如ふわりと体が浮き上がった。
にのに抱き上げられたと分かった時には、彼の胡座のなかに、ボスンと、おさまってた。

まるで、おまえはここな、というようににのの足の中におさまった俺が、にのを見上げると、彼は、クスッと笑って俺の頭を撫でた。


優しい優しい顔。


うーん……庇護される立場って、悪くないな。
なんだか心地いーや。


にのの手つきが気持ちよくて目を細めていたら、


「おまえ、そっか、名前がいるなぁ……んー……そーだなー…」


にのが、うーん、と口をとがらして上を向いた。


え、名前つけてくれんの?
ゲームのキャラクターとかやだよ?



「ハルオ」


にのがぽつりともらした、あまりに人間のようなフツーな名前に、ぽかんとしてしまう。



ハルオ。


…………なんで?


きょとんとした俺の顔を見て、にのは優しい目になった。


「俺ね、むかーし、ハルちゃんって犬飼ってたの」


言って俺をおもむろに持ち上げ、お腹をじっと見た。


「ほら。おまえ立派なのついてるだろ。だからハルオな」


……いやん。
見ないで。


ちょっと気恥ずかしくて、俺がきゅっと足を寄せる真似をしたら、にのは、あははっと、お腹を抱えて笑った。


「おまえ、人間みたいなことすんなよー?」


人間なんだっつの!


俺は、ジタバタと暴れてやった。

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