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オオカミさんの恋毒

第1章 出会いと挨拶

まだ、恋に落ちているわけでなく、恋に一歩踏み入っただけ。

目の前にいる臣は私の彼氏だとしても 亜弓とずっと視線を交わし合う二人には、臣には私が写っていない。

私は声をかけることができず立ち尽くしていた。




「 亜弓、悪いけど彼女といるから 」



臣が私の手を繋ぎ去ろうとする。



「 彼女? そんなの嘘… 信じないっ」



え…… 信じないって、どうして…



「 やっと会えたのに、臣… 私は別れたつもりないから!」



別れた… 臣くんの元彼女!



亜弓の言葉を無視して車に乗り走り出す。




「 臣くんっ いいの?あの人は… 」




臣くんの……




好きだった人でしょ、そんなこと口に出来なかった。

恋を知らない私にでもわかるくらい亜弓の辛そうな顔。

臣に会った時の嬉しそうに涙ぐむ亜弓の顔が頭から離れなかった。

私が今 彼女だとしても、たった数時間の出来事。

臣はなにも言わない。




「 送る、うち どこ?」

「 デパートの裏側にあるコンビニの近く… 」




私は臣の顔が見られず、窓ガラスに写る臣を見るだけだった。

30分もしないうちに自宅付近に来て、私はとっさにコンビニで買い物したいからと下ろしてもらうことにした。




「 ここでいいのか?」



臣くん、会いに戻るかな…



「 葉月?」



キレイな人だった。亜弓さん…



「 おい、葉月 」



もし、臣くんが亜弓さんに会いに戻ったら 私…



「 葉月!」

「 ごめ… ぼうとしちゃった。じゃあ、またね!気をつけてね、おやすみなさい 」




私は車を降りて振り向かずコンビニに走った。

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