
オオカミさんの恋毒
第1章 出会いと挨拶
互いに好きで、訳あって別れたわけじゃなかった。
それでも、亜弓は臣を思い続けていた。
亜弓の恋は終わってしまった、終わりにしないと前へは進めない。
私は恋が始まったばかりで、今 進むしかない。
「 亜弓さん、私も臣くん好きです。これから もっと好きになると思います。だから諦めてください 」
臣の手の温もりが私の頬から伝わってくる。
私は臣の手に手を重ねて臣を見て 微笑んだ。
臣も私に笑みを見せてくれた。
亜弓には私と臣がどう見えたのか… 何も言わず 席を立ち行ってしまった。
臣が私の横に座り、話してくれる。
「 亜弓は客だったんだよ、ずっと好きだって言われてて 試しに付き合ってみてから返事してほしいって… でも 長い間そうだったから、それで納得してくれるんならって… 」
そうだったんだ… お客さんで来て臣くんを好きになったんだ。
好きずきて 気持ちが暴走しちゃったんだね…
「 臣くん、好きな人出来たって別れたんでしょ?」
それ、私なの?
「 あ~ まぁ、な。あの頃… 1号店からの帰りに たまたま ここの店舗見に来てて、お前を見つけたんだ。
ニコニコしながら花を手入れしてるお前に 一目惚れしたんだよ… そんだけだ!」
うそみたい…
全然、そんなの知らない。
知らないよ…
「 臣くん… 私のこと ずっと前から知ってたんだ?」
「 だな。もう いいだろ!」
なんだか 胸がキュッとなるよ。
照れを隠すように臣は窓から外を見る。
「 アイツ… 」
え、アイツ? 誰かいるの?
臣が見たのは圭吾の立ち去る姿だった。
「 臣くん?」
「 葉月、俺が好きか?」
「 …臣くんは?」
「 さぁな 」
あ、ずるいっ!
