
オオカミさんの恋毒
第1章 出会いと挨拶
私は亜弓にハンカチを差し出した。
「 亜弓さん、聞いてください。
確かに私は臣くんと会ってから数日も経ってないし、浅いです。
でも、私… きっと一目惚れでした。
亜弓さんの気持ちをわかるなんて簡単には言えないけど、私は臣くんと別れません。ごめんなさい… 」
私は素直な気持ちを亜弓に伝えた。
それしか言えない…
だって、私は臣くんに恋したばかりだから 今 臣くんと離れるなんてできないよ。
俯く私の視界に、亜弓の後ろに立つ人が険しい表情で近寄ってくるのが見えた。
「 臣くん!? 」
え… うそ、なんでここに? どうして…
私の言葉に亜弓も 思いきり振り向いた。
「 臣!どうし… 」
「 葉月っ!」
臣くん?
臣は亜弓を見向きもしないで 私のそばに来て 手を頬をあてて言う。
「 お前、 心配させんな!」
「 え… なんで、あの… 」
「 臣っ! どうして? なんで この子なの… あの時 好きな人が出来たって、この子なんでしょ!」
へ…… どういう…こと? 私が別れた原因なの?
「 亜弓、俺は確かにお前と一緒にいたよ、でも 本心から付き合ったわけじゃない。わかってるだろ? お試しでいいからってずっと… 」
お試し?
亜弓さんの一方的な付き合いだったってこと?
わかんないよ… どうなってるのっ
「 私は好きだった!今でも好きっ お試しでも 私を思ってくれてたでしょ!」
「 俺は お前に指一本触れてない。それが伝わらなくて、はっきり言ったんだ、別れるって。
じゃないと付き合ってるつもりのお前は理解しなかったからだ 」
耳が痛い…… 亜弓は辛い恋だったと 私でもわかる。
臣は優しい。
ただ、その優しさが亜弓を傷つけていたことをわかっていたから、再会した時 悲しそうな顔をしたんだと わかった。
