
オオカミさんの恋毒
第1章 出会いと挨拶
聞こえてきた声に思わず耳をすます。
「 ね、セラフのだよね!京くん可愛いかったぁ 」
京くん?京弥くんね。
「 だよね!臣 いいよねっ」
臣さんがいいんだ、へぇ…
「 ちょっと~ 圭吾もいいから!」
この人は圭吾さんか… すごい人気だなぁ
「 ねぇ 一人いたじゃん、誰だろね?」
ん?
「 美容師じゃないでしょ、バイトじゃないの?」
私!?
バイトに見えるんだ、私…
「 彼女じゃないならいいよ、可愛いとは思ったけど どうでもいいし~ ねぇ行こうよ!見てから帰ろ!」
ええっ 見てから帰るのっ
すごい… そんなに見たい?
三人の噂話を盗み聞きして、誰もいなくなったところで私はトイレから出る。
やっぱり人気なんだ、臣さんたち…
知らなかったなぁ…
トイレから出ると、目と口が塞がれ体が反転しドアから奥に押し込まれた。
んーっ! な、誰っ
怖い、恐怖心が一気襲ってきた私は涙が込み上げてくる。
や… なんで…
パッと離された手に、視界が滲んだままで息を大きく吸い吐いた。
滲んでもわかる人が私の前にいて、恐怖が薄れ 安堵が加わる。
「 臣、さ… なんで…?」
「 お前が遅いから 」
あ… 私、話聞いてたから遅くな って…
「 だからって今のビックリします… 」
「 あ、そう。んじゃ… ほら、来いよ。安心させてやる 」
は… へ? えっ!?
臣は私に手を広げている。
これは~ 私にどうしろと?
やだ、抱きしめるってこと!!
戸惑い顔に熱が集まりはじめると、なかなか腕の中に行かない私に痺れを切らしたのか 臣から私を抱きしめにきた。
何これ! う、そ~ 臣さん!?
すぐに臣の温もりが私を包み込んで ドキドキがうるさい中で 安堵が私の中に流れ込んできた。
