
オオカミさんの恋毒
第1章 出会いと挨拶
「 ご注文はお決まりですか?」
そう聞く店員は私ではなく、臣だけを見て聞いている上に、出された水には 臣だけレモンのカケラが入っていた。
んん? 私のレモンない…
わかりやすい態度だなぁ
注文には 臣がピザ、私はグラタンを頼んだ。
「 水 代えて 」
「 え… でも これレモンないですよ 」
「 俺 酸っぱいの嫌い、梅干しは好きだけど 」
はぁ?
なに言ってんの、臣さん。レモンも梅干しと同じで酸っぱいのに…
やだ、おかしい!
私は臣の言うレモンと梅干しの酸味を分ける事がおかしくて 笑いをこらえていた。
「 おい、笑ってないか 」
「 いいえ… ん、笑ってな… 」
笑いをこらえながら 臣を見ると、机に肘をつき頬ずえで笑みを見せる。
私は 臣の笑みを見て、こらえていた笑いを飲み込んだ。
笑ってる、よね?
なんで こんなにカッコいい人が目の前にいるんだろ…
「 お前 手は?」
「 大丈夫です。未夢ちゃんに爪が剥がれないようにしてもらったから 」
「 で、彼氏どんな奴?」
彼氏… ああ!ヤバい、いるって嘘ついちゃってるんだった。
ここは適当に…
「 えっと… 背が高くて、茶髪で、カッコいい車乗ってますよ~ 」
こんなんで いいかな?
実のところ、私は彼氏未経験。
高校生の時 好きな人はいたが 告白も付き合った経験もない。
そんな私が嘘をつくには これが精一杯の答えだった。
