
狼くんを飼いますけど…
第3章 同居者
スーパーに入ると 試食どうぞ と何かしら手渡してくれる。
しかも、風船までもらった。
「 子供か… 」
あのホームレスにあげよっかな。
あ、そういえば 名前 聞いてないじゃん。
私って つくづく おバカ…
会計すると、金額がいつもの倍の金額。
あれ… あ、私って世話好きじゃないよね?
何してんだか…
スーパーから出て行くと、若者はまた 角の方で体育座りしていた。
ん~… 何歳なの?
体育座りする奴なんて そうそういないでしょ。
「お待たせ、ごめんね。はい、これ お土産 」
って 風船だけど。
ま、いらないよね…
風船を手渡すと キュッと握りしめる若者。
「 …ねぇ 名前、聞いてもいい? 私は南部 笑瑠って言うの。意外と可愛い名前でしょ~… 」
ウケないよね、うん、わかってた…
少し間が空いて、若者が立ち上がり私を見ないまま答えた。
「 …志貴(しき)」
ふうん… 志貴って言うんだ、ほんとかな?
ま、いっか。
「 じゃあ、志貴くん?荷物持ってくれたら うちの お風呂使っていいよ 」
駆け引きしてどうすんのよ、ホームレス相手にさ…
あ……
戸惑いながら荷物を奪うようにして持つ志貴。
私は志貴にニッコリ笑みを見せた。
いんじゃない?
駆け引き成立。
