
狼くんを飼いますけど…
第4章 イタズラ禁止令
出勤ギリギリ裏口から従業員用の部屋に志貴を連れて入ると、店長以外のバイト仲間がいた。
「 美也ちゃん、由芽ちゃん おはよ~ 」
「 あ、笑ちゃんおは…… えっ!? 」
気づいた?よね…
「 笑留!? あんたなんで?そのイケメン誰よっ 」
え、わかんない? あれ…
私の後ろにいる志貴が、昼間に会っている無銭飲食の奴だとは気づいていない。
小汚なかったホームレスの容姿ではないからか、美也と由芽花は驚いている。
新しいバイト…って言ってもいいのかなぁ
「 あのね、彼は… 」
「 は~ なんか疲れるぅ…あら、笑ちゃん その子が新しいバイトくんね? 店長から聞いたわ 」
「 那緒さん… はい、そうです!志貴くんです」
良かったぁ お局の那緒さんがいれば 余計なこと聞かれないしね。
那緒はカラスの社員で一番年上のお局様。
仕事に入れば誰も逆らえない。
「 へぇ… あなた、磨けば光るわね… 私が指導につくから よろしくね?」
え… 嘘でしょ… 那緒さんが教えるの?
どうしよう、それだけは…
志貴が危ない!
「 笑ちゃん 早く着替えて準備にかかって!忙しいんだから。志貴くんは私が見るから任せて 」
ええ… 本気?
でも、反論するとシフト減らされかねないし…
「 わかりました。志貴くん、那緒さんの言うこと聞いて仕事教えてもらってね?」
「 うん… 」
ああ、不安そうな顔してるよ~
あとで店長に聞いてみようかな…
でもなぁ 那緒さんに気づかれたら 志貴に近づきにくくなっちゃうし…
着替えるとはいえ、控え室の真ん中に 大のれん できちんと男女別にはなっている。
入口手前が男、奥が女。
店長が特別に作ったと言う、奥には狭いながらに4畳ほどの個室がある。
冷蔵庫もあり、食事休憩や、体調が悪くなったりした時には使う。
制服に着替えながら 志貴の不安そうな顔が頭にちらつく。
大丈夫かなぁ…
那緒さんって かなりの肉食って聞いてるし…
