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ARS*ヒミツノコイ*

第5章 次の日

隣のスタジオCに入ると、ちょうどリハが終わり、本番が始まるところだった。

「はい、じゃあ今からシーン21の本番いきまーす!」
監督さんの通る声が私の耳に届く。


(あ、今から本番なんだ…邪魔しないように遠くからみとこ)
ドア付近の壁に寄りかかって和也の真剣な姿を目で追う。
やっぱり仕事中は芸能人で、オーラがあって、いつも家でニヤニヤ意地悪してくる和也とは大違い。
真剣にこの仕事に没頭しているんだな…


「よーい、アクション!」




「優也、何飲む?お茶とジュースしか無いけど…」

相手役の子が和也に問いかける。あんまり見たことが無い新人の女優さんだけど、かわいいし演技もリアルに感じる。

「とも」




和也が相手役の子の名前を呼んだ時びくりとした。
私の名前と似てたからもあるけど…それよりも



「いいよ、飲み物は。それよりこっち来てよ。」

声が、視線が、表情が。

私にいつもしているものと同じで。
それを私以外の人に向けている和也を見て。



頭を金づちで殴られなようだった。

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