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嵐の俺と、パパの俺。

第2章 なにがどうなって



エレベーターの扉を閉められそうになったので慌てて乗り込む。


「あ、あと翔さんの部下の松下さん、すっげぇおとなしそうな子だけど、気をつけといたほうがいいよ。」


12階のボタンを押したニノが振り返っていった。


松下??


「え。なんで。」


「あの人。絶対翔さん狙ってる。智との結婚も祝福してなかったみたいだし、智から翔さん奪おうとしてるみたい。」


あ、これ松下と仲いい子から聞いた話ね
とニノは笑った。


「まあ翔さんが噂を信じるとは思ってないけど、一応親友として忠告しとく。」


いつの間にか12階につき、ニノがエレベーターを降りたので、ついつられて降りてしまった。


「えっ、翔さん19階でしょ?」


12階で降りた俺にびっくりしているニノ。


「あ、ついニノにつられて!じゃあ仕事がんばろうな!」


なんてホントは自分の仕事場の階がわからなかっただけだけど。


もう一度エレベーターにのり、19階を押した。












19階からの景色は素晴らしいが、高所恐怖症の俺には直視できない。なかなか最悪な職場だ。


自分のデスクに向かう途中、


櫻井編集長おはようございます!


と何度も声をかけられ、少し照れくさい。



やっとデスクを見つけ荷物を置くと、

女性が駆け寄ってきた。


「櫻井編集長!これこの間頼まれた資料です、目を通してもらってもいいですか?」


髪の長い、清楚な感じの女性だ。

名札を見ると、ギョッとなった。

松下だ。


「あ、あぁ。」


見てもどうせよくわからないだろうけど、一応資料を受け取り目を通す。編集の日程がズラーッと書いてある。よくわからん。


「とりあえずは大丈夫そうだ。あとでもう一度確認しておくよ、ありがとう。」


「わかりました!ありがとうございます!」


彼女は頭を下げて、自分のデスクに戻ると熱心にパソコンと向き合い始めた。


ニノは気を付けたほうがいいと言っていたけれど。


なんだふつうじゃん。むしろ礼儀正しくて仕事に前向きに取り組んでるって印象だけどなぁ。


「櫻井編集長、この間の件で、小説家の方と相談したんですけど」


別の社員に呼び止められ、

松下のことはすっかり頭から抜けてしまった。

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