
嵐の俺と、パパの俺。
第2章 なにがどうなって
智くんが楽屋に帰っていく姿を見守り、俺はそのままメイク室に向かった。
「あらー翔ちゃんやっと来たわね!もう待ちくたびれちゃったわ」
出迎えたのは、よくお世話になるオネエのスタイリスト、那帆さんだ。
「ごめん那帆さん、寝坊しちゃって」
「いーのよ、翔ちゃん忙しいのはわかってるから、その代わり今度デートよろしくねぇ」
ニコニコと笑う那帆さん。
那帆さんには長年付き合っている大好きな彼氏がいる。それでもよく俺をこうしてデートに誘ってくる。そういえば俺のことがタイプだと、前に言ってたなぁ。
「はいはい、彼氏さんも含めて三人で飲みに行こうね。」
そう言うと、那帆さんは腑に落ちないような顔をしたが、気にしないことにした。
鏡の前の椅子に座ると、那帆さんは慣れた手つきでファンデーションを塗っていく。
「あら、このネックレス素敵ねぇ」
那帆さんはネックレスをみて、興味を示した。
「ねえ、これもしかして、貰いもの?」
名前まで彫ってあって素敵ねぇ、と笑う那帆さん。
「ええ、まあ、その」
智くんから、と言いかけて慌てて口を紡いだ。
「あらぁ、もしかして、彼女から?」
「ち、ちがいます!てか俺、彼女いないし」
向こうの世界では妻もいるし、子供もいるけど。
慌てる俺を、那帆さんはニヤニヤしながら見ている。
これじゃまるでいるって言ってるようなもんじゃ!
「まああんまり深くは聞かないわ。でもなんかあったらあたしに相談しなさいよ?」
ニヤニヤしながら那帆さんは俺の髪型を整えはじめた。
