
嵐の俺と、パパの俺。
第2章 なにがどうなって
トイレの洗面所で顔を洗う。
持ってきたタオルで顔を拭うと、
鏡に映る自分と目があった。
そのまま視点を首元に持って行くと、昨日智くんから貰ったネックレスがあった。
この存在が、あの世界のことは夢でないことを証明している。
ネックレスをじっと見つめていると、誰かの視線を感じ、慌てて振り向いた。
そこにはさっきまでソファーで寝ていた智くんが。
「あ、智くん、おはよ!えっと、遅刻してごめん、みんなに迷惑かけてほんとに申しわけ」
「そのネックレス、似合ってるね」
俺の言葉を遮り、聞いてきたのはネックレスのこと。
まさか突っ込まれると思ってなくて、動揺してしまった、
「翔くん愛おしそうに見てたよね、大切な人からの贈り物?」
そう尋ねる智くんの顔はなんだか悲しそうで。
「あ、いや、大切な人というか」
智くんからのだよ、なんていえるはずもなくて。
はっきり言わずに戸惑っている俺を見て、智くんは寂しそうに笑った。
「翔くんにだってそういう人くらいいるよね、変なこと聞いてごめん」
そのままトイレから出て行こうとする智くんの腕を慌てて掴んだ。
「なに?」
「えっと、あ!トイレはいいの?そのために来たんじゃ」
そこまで言いかけてハッとなる。
まさか俺のこと心配して来てくれたんじゃ、
「やっぱ行きたくなくなった、楽屋帰るね」
困った顔した智くんがこちらを見た。
いつだって智くんを困らせてばかりだ。
「ごめん」
だからこれ以上困らせたくなくて、掴んだ腕をそっと離した。
