
嵐の俺と、パパの俺。
第2章 なにがどうなって
おい、もう少し遠慮しろよ。
寿司を頬張る相葉ちゃんをじっと睨む。
一貫数百円する、割と高めな寿司屋。
にも関わらず、相葉ちゃんのペースは1皿100円の寿司屋と変わらない。
彼を見ながらため息をついていると、
「翔くん」
と声がした。
「このマグロまじうまいよ、」
あーん、って智くんが俺の口の中にマグロの寿司を入れる。うん、たしかにうまい。
「この店、また来たいって思ってたんだ、連れてきてくれてありがと」
ふんわり笑う智くんを見ていると、相葉ちゃんへの恨みなど忘れてしまった。
この世界の智くんは、あちらの世界の智くんよりも柔らかい雰囲気がある。そして眠そうだ。
じっと見つめていると、なに?ってマグロの寿司を頬張ったまま聞いてくるもんだから、なんでもないよ、と答えた。
やっぱり、好きだ。この気持ちは忘れたくても忘れられない。
会計時、提示された金額に一瞬目を疑ったが、動揺している姿を他のメンバーにばれたら格好悪いのでカード払で済ませた。
じゃあねーとお互いに手を振りながらタクシーで帰っていく。
俺はみんなを見送ってから、タクシーに乗り込んだ。
後部座席に深く腰を掛け、行き先を伝える。
メガネにマスク、帽子と変装ばっちりなおかげか、運転手は俺に気づいていない。
すこし寝るか、
ふいに訪れた睡魔に身を任せ、窓に寄りかかりながら眠りについた。
