
出逢いは最悪だったけれど。
第2章 問題児、大野
松岡に意味を聞こうとしたが、チャイムでそれは叶わなかった。
先生たちが慌てて教務室から出て行く姿につられ、俺も急ぐ。
名簿と、配布するプリントを抱え、忘れ物がないか確認する。
よし、ないな。行こう。
踏み出した一歩は、まさに波乱の教師人生の幕開けだった。
302の生徒たちは、ごく普通だった。
松岡があんなことを言うから、ちょっと心配していたのだが。
だが安堵したのも束の間だった。
それは、出席確認で名前をよんでいるときのことだった。
「5番、大野智」
返事がない。
「あれ?大野は?休み?」
目の前の席に座る生徒に尋ねると、彼は一瞬眉をひそめた。
「大野なら屋上にいると思います。」
屋上?
なんで?
頭の中は疑問で溢れていたが、彼がこれ以上口を開くこともなく、俺も問い詰めることを諦めた。
あとで松岡先生に聞いてみよう。
結局、大野だけでなく、二宮、松本という生徒も朝会に出席していなかった。
