
出逢いは最悪だったけれど。
第4章 問題児、松本潤
大野をどうやって教室に戻すか、いろいろな策を頭の中で巡らす。
放課後、俺は明日の授業の準備をするために教室へ向かっていた。
彼との出会いもまた突然だった。
「ばかっ!あり得ないっ」
はだけた制服に身を包んだ女の子が教室から飛び出してきた。
よりによって302だ。
慌てて教室にはいると、
一人の男が机に腰を掛けたままこちらを見ていた。
誰だ?
うちの制服を着ているということは
ここの生徒か?
「初めて見る顔、あんただれ?」
先に口を開いたのは男のほうだった。
「302担任の櫻井翔、きみは」
着崩した制服に名札はついていない。
髪色は茶色すぎるし、
完全に校則違反だ。
「あー噂の新しい先生ね。俺、松本潤」
松本?
あ、今日欠席だった生徒!
「欠席した理由はさっきの彼女か?」
泣きそうだった女の子を思い出す。
「あー、まあね。せっかくデートしてあげたのにさ、いざやるってなったら教室じゃやだとか喚き出してさ、めんどくせーの」
笑う松本がタバコを取り出したところを見逃さなかった。
ライターに火をつけようとする腕を抑える。
「未成年者の喫煙は法で禁止されてる」
彼の濃い眉がピクリと動いたが、気にしなかった。
だめなものはだめだ。
「それに彼女を大切にしろ、教室でヤるなんて非常識だ」
真面目にいったはずなのに、
松本は数回瞬きをしたあと、
大きな声で笑った。
「は?彼女?先生冗談きついなー!あれが彼女のわけないじゃん?あんなブス」
なんだこいつ。
俺は笑う彼をあぜんとした表情で見つめるしかなかった。
