
出逢いは最悪だったけれど。
第2章 問題児、大野
こんにちは。新米教師、櫻井翔です。
この春無事に大学を卒業し、文武両道を掲げる大宮南高校に赴任しました。さあ、楽しい楽しい教師生活のスタートですよ!
そのはずだった。
ついさっきまでは。
「え?302の担任?」
俺が聞いていた話では302の副任だったはずだ、が。
「実はね、302の担任になるはずだった先生が突然辞表だしてきてね」
いやーまいったよ。と笑う教頭。
待て、笑い事ではない。
「まあ櫻井先生は優秀そうだし大丈夫でしょう」
なにを根拠に。
だが教頭は反論の余地を与えず、用事があると言って教務室から姿を消した。
立ち尽くしたままの俺。
副任と担任とじゃだいぶモチベーションが違うんだが。
さっきからいろんな先生から憐れな目で見られているのは気のせいだろうか。
放心状態のまま、与えられた自分のデスクについた。
隣から煙たい匂いがして、チラリと視線を送る。
「吸うなら喫煙室でどうぞ」
「言うね〜新米教師のくせして」
デスクの名札に松岡と書かれた席に座る男は、口に含んでいたタバコを灰皿に押し付けた。
「人としてどうかと思います」
生徒が出入りする教務室で吸うな。
「厳しいねー!まあ仲良くやろうよ、俺301の担任の松岡」
差し出された手は、男らしくゴツゴツしている。同じ3学年の担任同士仲良くやっていくしかないか。
「302の担任になりました、櫻井翔です。よろしくお願いします。」
302という言葉に松岡は過剰に反応した。
「302?教師人生早々荒れそうだなぁ。まああんまり無理すんなよ?」
このときはまだ松岡の言っている意味が全くわからなかった。
もちろん問題児三人の存在も。
