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10年恋

第6章 第六章



結局智くんの誤解は解けないままで。


俺は英語の教師からもらった課題をカバンにしまい、


だれもいない教室を後にしようとした、が。



「ねえ櫻井くん、今週末空いてる?」


目の前にはあの女、優衣だ。


「あーもしかして祭り?」


「そう!よかったら一緒に行かない?てか、一緒に行きたいな」



上目使いでそういわれたら、ほとんどの男がノックアウトだろう。


でも残念。

俺には効きませーん。



「ごめん、先約いるから。」


帰ろうと彼女の横を通り過ぎようとしたが、腕をつかまれ、俺はうんざりした表情を隠せなかった。



「だれ?もしかして彼女?」


なんでわざわざあんたに言わなきゃなんだよ。


「そういうことにしといて」


めんどくさい。

なのに彼女はつかんだ腕を離そうとしない。


「私じゃだめ?」


「は?」


「私櫻井くんのこと好き!」


薄々気づいてはいたけれど。



「ごめん、俺好きな人いるから」


あのひと以外考えられない。

今も

きっとこれからも。



腕を振りほどいて、教室を後にした。

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