
10年恋
第7章 第七章
人が多すぎて探すのも一苦労だ。
必死に人をかき分けながら進む。
目についたのはさっき二宮とやった屋台とは別の金魚すくい。
そこに見知った後ろ姿があった。
寂しそうに泳いでいる金魚を見つめている彼を見て、胸が締め付けられる。
「智くん!!」
彼の名前を呼ぶと、智くんは驚いた顔してこちらを見た。
「な、なんで翔くんが」
いるの、という言葉は声にならなかったのだろう、智くんの見開いた瞳から涙があふれて、思わず彼の腕をつかんだ。
「行こう」
できるだけ、人のいないところに。
智くんの腕をつかんだまま、人ごみをかき分ける。
しばらく歩くと、祭りの近くにある河川敷についた。
先ほどよりは人が少ない。
近くにあったベンチに智くんを座らせた。
「心配したよ、松本から智くん見失ったってきいたときは」
「ごめん」
智くんの瞳からあふれ出る涙をそっとぬぐう。
「でも見つかってよかった」
俺が一番に見つけることができて
よかった。
「二宮や松本に伝えておかなきゃだな」
携帯を取り出そうとした手は智くんにつかまれた。
「いい、俺もう帰るから」
「え?なに言って、花火だってこれからじゃん!」
それでも智くんは帰ると言い張った。
「翔くんははやくニノのとこいったほうがいいよ」
花火一緒に見るんでしょ?って、言う智くんに、ああそういえばと思い出す。
「あーたぶん智くん勘違いしてる。俺と二宮は付き合ってないよ」
やっと誤解を解ける
とおもったのもつかの間。
「嘘、だってさっきキスしてたじゃん!」
キス?
あ、
え!?
「見てたの?」
「見ちゃったの」
これはちゃんと説明しなければ、と智くんの隣に腰をかけた。
