
10年恋
第6章 第六章
授業は全然あたまに入ってこなかった。
寝ていたわけじゃない。
頭が悪いのもあるけど。
「智くん珍しく寝なかったね!でも心ここにあらずって感じだったけど、どうしたの?」
教科書を閉じながら、隣の翔くんが笑いかけてくれた。
いつもならテキトーに言って誤魔化すのに、言葉が出てこない。
翔くんの笑った顔見るだけで苦しくなる。
なんで?
「べ、べつになんもない!それよりニノと話しなよ!」
しまったと思った時には遅かった。
これじゃまるで、、、
「え!なんでニノ?あ、まさか今朝の嫉妬してる?」
ニヤニヤ顔の翔くんはちっともかっこよくなんかない!!!
「俺のニノ奪った翔くんに嫉妬してんの!!ばーかばーか!」
「え!バカってなんだよ〜!智くんのほうがばーかばーか!」
二人して夢中になってバカを言い争っていたら、呆れた顔したニノがやってきた。
「私からしたら二人ともばーかですよ」
うるさい、と怒られ、俺と翔くんは何も言い返せなかった。
それからニノは先程の授業でわからなかった問題を翔くんに聞いて、翔くんはめんどくさがることなくひとつずつ丁寧に教えていた。
それを隣の席でジッと見つめていた。
納得したり分からないという仕草をしたり、ニノの表情はコロコロ変わる。
翔くんは微笑みながら優しく教えている。
ふたりの空気感は、
まるで。
「と、トイレ行ってくる」
「私も一緒に付いて行きましょうか?」
突然席を立ち上がった俺を、ふたりが見つめた。
「トイレくらい一人で行ける!」
いやむしろひとりでいさせてほしいんだ、今は。
