
10年恋
第5章 第五章
それからは
ニノは一切この話をしなくなった。
さっきまでのことが嘘のように、
笑いながら漫画を読むニノ。
とりあえず、
元気になってくれたからいいのかな。
なんて思いながら、俺もまだ読んでいなかった漫画を読み始めた。
気付いたら朝で、
俺は読んでいた漫画を枕にして
床の上で爆睡していた。
慌てて起き上がると、掛けてあった毛布が体の上から落ちる。
この状況を理解するまで少し時間がかかったが、、
あー思い出した。
ニノと漫画読んでたらそのまま寝ちゃってたんだ。
あれ?
ニノは?
あたりを見回してもニノはいなくて、
机の上に紙がおいてあった。
『智へ
おはようございます、気持ちよさそうに寝ていたので起こさないで帰ります。きちんと朝ごはん食べておくこと!迎えに行きます』
まるで母ちゃんみたいだと思った。
こんなに心配してくれるのは、ニノしかいない。俺にはもう両親はいない。
昨日買っておいたパンを口に加えながら制服をきていると、ドアを叩く音とニノの声が聞こえた。
昨夜はあんなにツラそうな表情をしていたのに、
翔くんに告白したニノはいつもと変わらずだった。
だから大丈夫だと思っていたんだ。
もう、この問題は終わったことだと。
「智、遅い!」
歯磨きを終え、鞄を掴んで玄関に向かうとそこには腕組みした仁王立ちのニノがいた。
「ごめんごめん、いつもありがとね」
そう言うとニノはちょっとだけ嬉しそうに笑った。
感謝しきれないくらいだよ。
ニノが迎えに来てくれなかったら毎日遅刻してたかも。
通い慣れた通学路を、ニノと歩く。
今日は青空だ!
空を見上げてそう思っていたら
目の前を歩いていたニノが突然立ち止まった。
そのままニノの背中に衝突して、
どうしたものかと顔をあげると目の前には翔くんがいた。
なんだか、昨日のニノみたいにせつなそうな表情をしているけれど、どこかつよい意志を感じる翔くんの瞳に、目が離せなかった。
どうして翔くんがここに?
浮かんだ疑問は口には出せなかった。
