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10年恋

第5章 第五章





「なんで」


二宮に好きな人がいることは相葉から聞いていた。

いつか二宮に聞いてみるか、

なんてのんきに考えていたのも確かだ。

なのに

なんで

よりによって

「俺なんだよ」


相葉になんていえばいい?

二宮の好きな人は

俺だったよって?

言えるわけないだろそんなん。



「初めて見た時から、好きでした。一目ぼれってやつですかね。でも翔さんは智のことが好きで、俺は翔さんに智と松本の邪魔をするなって言っときながら、実は翔さんと智がくっつくことを恐れていたのかもしれませんね。」


弱弱しく言葉を発した二宮は、今まで見たことのないような切なげな表情をしていた。


「突然告白してしまって申し訳ないです。最近の翔さんと智を見ていたら居ても立っても居られなくなって。」


二宮は床に落ちたペンを拾い上げ、呆然と立ち尽くしている俺に手渡した。


二宮はどんな思いで俺を見つめているのだろうか?

俺は二宮に

なんていえばいい?


「翔さんの顔、まぬけすぎ。まあ返事は待ちますよ。今すぐじゃなくていいんで。」


後悔しない選択をしてください、と二宮は付け加えた。

帰り支度を始めた二宮に

俺はなにも言えなかった。

浅はかな、

ただ思いついた言葉を

今の二宮にはいってはいけない気がする。

そんなことがばかりが

頭をかけめぐり

二宮が帰った後も

しばらくの間立ち尽くしていた。

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