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10年恋

第5章 第五章

翔side



翌日、教室に行くと松本が俺の机に座っていた。


「よ、おはよ!」


松本の手には1枚の紙。

それを差し出された。


「次期生徒会長に翔くんを推したいと思う」


またその話か。

それについては何度も断っていた。


生徒会長の柄じゃないし、

第一、転校生の俺に務まる気がしない。


「副生徒会長には俺が立候補する。だから心配すんな」


松本がにやりと笑う。

補佐は任せろってやつか。


「申し訳ないけど、生徒会長になる気はないよ。」


生徒会長なら松本の方が向いていると思う。


松本はみんなからの信頼が厚いし、

松本自身も先頭に立って物事を進めたい性格だし。


「ふーん。女の副生徒会長には優衣を推してるんだけど、まああいつは確実にこの話に乗ると思う」


優衣って、あの馴れ馴れしい女か。


「だからなに?」


あの女が副生徒会長ならもっとなりたくないんだけど。


「お前のこと好きらしいぜ?あいつ結構かわいいし、翔くんとお似合いだと思うけどな」


勘弁してくれ。
俺はああいう女がだいっきらいなんだ。


松本が何を考えているのかいまいちよくわからない。

なぜそこまで俺を生徒会長に推すのだろうか。



「ちょっとニノ、待ってよ!ねえってば!」


相葉ちゃんのでかい声が響いたのと、ニノが教室のドアを開けたのはほぼ同時だった。


ニノのとなりには、困った顔した智くんもいた。

どうやら相葉は朝からニノにアプローチしているようだ。


「まあ、いい返事待ってるわ」


肩を叩かれ、松本が去り際に耳元で呟いた。

いい返事、ね。


渡された紙は同意書だった。

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