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10年恋

第1章 第一章


準備を終え、リビングに戻ると、母親は車の手配を電話でしていた。
実家から迎えが来るようだ。

母親が俺に気づき、思い出したかのように、電話の相手に指示する。

「あ、翔の学校のことなんだけど。早めに転校の手続きお願いね。ええ、近場の学校でいいわ。頼んだわよ。」

そうか、
学校、転校になるのか。

不思議と未練はなかった。
彼女と友達がいたのに。
別にいっか、
別れの挨拶でもしようかと触れかけた携帯をポケットに戻した。

結局は上辺だけの付き合いで、
彼女に対しても愛情のかけらもなかったんだな俺。




1時間後、迎えが来た。
17年間お世話になった家と、この街に別れを告げ、俺と母親は父親を捨てた。

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