
10年恋
第2章 第二章
それからの昼の記憶はあまりない。
ない、というか、
放心状態だった、という方が正しい。
相変わらず相葉は騒がしかったし、
二宮はそんな相葉を無視し続け、俺をじっと見つめて何かを考えていた様子だった。
俺はただ、智くんを見つめていた。
松本という男といちゃいちゃして嬉しそうな智くんを。
「智のことなら、諦めたほうがいいですよ」
4限の授業がおわり、休み時間にトイレに行った俺。
手を洗っていたら突然声がした。
振り向くと、腕を組んで壁によっかかった二宮がいた。
「好きでしょ、智のこと」
何も言わずにいると、二宮はさらに確信をついてきた。
わかってる
そんなの
あんなラブラブな様子見せつけられたら
誰だってわかるよ
叶わない恋だってことくらい。
「智、ずっと潤に片想いしてて、ようやく叶ったんだよ。両親亡くして塞ぎこんでた智を救ったのも潤なんだ。やっと智に笑顔戻ったんだ。俺が言いたいこと、翔さんならもうわかるよね?」
二宮がじっと俺を見つめる。
昼休みもそうやってずっとみつめていたな。
二宮に心の中をすべて見透かされているような気分だ。
「あの二人の邪魔、すんなよ?したら俺、許さないから」
静寂なトイレに二宮の声が響いた。
