
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
俺の内心の焦りを知ってか知らずか、拓真さんは落ち着いた声で
「ここだ」
と言った
けどどんなに無表情でも俺にはわかる
拓真さん、悲しんでる
ここに眠ってる人が、そんなに大切な人だった?
この人は誰なんだろう
昔の恋人、とか……?
そこにどうして俺を
ズキン、と心臓が痛んで、地面が一瞬だけ揺れた気がした
けどこんなところで倒れるわけにはいかなくて、唇を噛んで堪える
するとゆっくりと口を開いた拓真さんから真実が告げられた
「この墓は、俺の母のものなんだ」
え……
「お母さん……?」
「あぁ。子供の頃に亡くしたんだ。とは言っても、俺はその時にはもう高校に入っていたが」
何でもないことのように言うけど、それは言葉だけで表情は全然悲しみを隠しきれてない
高校生だって変わらないよ
年なんて関係ない
辛いものは辛い
俺が黙って拓真さんの手に自分の手を繋げると、拓真さんは反対の手で俺の頭を優しく撫でてくれた
「そんな顔をするな」
「……だって……」
拓真さんが悲しいなら、俺も悲しいんだもん
仕方ないじゃん
「お父さんは? いなかったの?」
