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泣かぬ鼠が身を焦がす

第35章 秘事は


そんなことを考えていると拓真さんが「そろそろ行くぞ」と声をかけてきて、俺も返事をしてまた石段登りを再開した

登れば登るほど周りにあったお墓は増えて行く

海の反対側だけだったのが、両側に並ぶようになった


普通だったらこんなにお墓に囲まれたところにいたら怖いのかもしれないけど、お墓越しに綺麗な海が見えるから全然怖くないや

むしろちょっとだけ神聖な気持ちになるかも


すると、拓真さんが突然立ち止まった


「?」


まだ何の建物も見えてないけど
疲れちゃったかな


「拓真さん?」


俺が後ろからそうたずねると、拓真さんの視線は海の有る方に向いている


海、を見てるわけじゃないよね?
さっきその話は終わったし

ってことは


「!」


俺はまさか、と思ってまた拓真さんの方を見た


お墓……見てる?

拓真さんの視線の先にある墓石を確認してみるけど、拓真さんの名字である『杉田』の文字は刻まれていない


じゃあ、誰?


そう思ったところでまた薔薇の花言葉が頭をよぎった


拓真さんが愛してた人が、ここに眠ってるってこと……?

そんな


俺は愕然として何も言えなくなってしまう


どうしよう
どしたらいい?

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