
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
歩く途中で、拓真さんが持っている花束を盗み見る
いや、見たって花の意味とか花言葉なんて全くわかんないんだけどさぁ
色とりどりの花が少しずつ入った賑やかな花束の中で、花の種類の知識すら乏しい俺がわかった花はたった1つ
赤い、薔薇……?
赤い薔薇の花言葉って有名、だよな
確か……
思い出そうとしたところで、隣を歩いていた俺すら聞き逃しそうな程小さな音で拓真さんがため息をついた
気になって見てみると、拓真さんの視線の先には花束
そしてその表情は困ってるというか悲しんでいるというか切なげなというか、とにかく複雑そうな感じだった
その顔を見て、さっきまで思い出そうとしてた赤い薔薇の花言葉が頭に急浮上してくる
あぁ、そうか
赤い薔薇の花言葉は『貴方を愛しています』だ
俺の心臓に、また何か重いものがズシ、と落ちる
気を抜いたらその場で崩れ落ちてしまいそうなほど重くなった身体を、拓真さんに気づかれないよう細心の注意を払いながら息を吐いて前に歩かせた
歩いて行った先は、商店街に入る前に行くって言ってたちょっと大きめの神社
石段を登ると立派な本殿が見えた
「結構デカイね……!!」
「そうだな。正月にはそこそこ人も集まるんだ」
「へー」
