
泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
手水舎で拓真さんに教わりながら作法通り両手と口を清める
それから本殿に行ってお参り
にれいにはくしゅいちれい……?
これまで俺が如何に適当に神社にお参りしてたのかわかるほど、どれも拓真さんに教えて貰いながらお願い事をする
「願い事をする時は住所と名前まで心の中で伝えるんだぞ」
「え、なんで?」
「神様が純のことどこの誰だかわからなくなったら困るだろうが」
神様の癖にそんなこともわからんのか
「それから、『こうして下さい』ではなくて『こうなるように頑張るので見守って下さい』という風に頼むんだ」
「?」
一瞬2つの違いがわからなくて困惑した俺だけどすぐに
「神様は願いを叶えてくれるんじゃなくて、見守る存在だってこと?」
とわかった
「そうだな」
なんか、結構めんどくさい上に何もしてくれないんだなぁ
「サンタさんのが優秀な気がする」
「そうかもしれないな」
拓真さんが俺の変な発想に笑う
だって願い事書いて靴下の中に入れておくだけで欲しいもの何でもくれるんだよ?
めちゃめちゃ優秀じゃん
それなら多少の不法侵入ぐらいは許す気になるじゃん
