泣かぬ鼠が身を焦がす
第35章 秘事は
拓真さんが軽く会釈すると、その人は営業スマイルから素の笑顔へと表情を変えた
「随分久しぶりね。お元気だった?」
「お陰様で。そちらもお元気そうですね」
にこやかに会話をする2人を見て、さっきの喫茶店の映像が頭に浮かぶ
この人も昔の知り合い?
ってことは、拓真さんはこのお花屋さんにもよく来てたんだろうか
また俺の知らない新しい拓真さんだ、と思って改めて店を見回してみる
ところどころに汚れじゃない黒ずみ?とか傷みたいのが見えて、確かに年季を感じるかも
昔から商店街にある花屋さんって風格もあるし
少しの間店員さんと話をしていた拓真さんは、最後に小さな花束を注文した
「はい、これ。懐かしいでしょう?」
「……そうですね。昔と変わらない」
受け取った花束が、昔と変わらない?
いつも同じ花束を注文してたのかな
そう考えたところで、拓真さんに送ったアロマキャンドルの材料を選びに行ったことを思い出す
あ、そうか
花って花言葉とかあるもんね
じゃか何か意味を込めて作ったってことなのかな
「ありがとうございましたー」
そして俺たちはにこやかな店員さんに見送られて店を出た
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