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泣かぬ鼠が身を焦がす

第35章 秘事は


車で走って数十分

海岸沿いをずっと走っていた道が少しずつ街中に入っていく

そして、市町村の境界線を知らせる看板が見えたところで拓真さんが


「ここが俺の生まれた町だ」


と言った


「……なんつーか、結構普通だね?」
「普通か。そうだろうな」


俺の語彙力の乏しい感想に拓真さんが笑う


「純は都会生まれの都会育ちだからな。こんなところで暮らしたことはないだろう」


確かに俺は高級住宅街とかばっかり住んでたし、母さんと2人の時も別に田舎ではなかったから


「そうだね。こんな閑静な?住宅街で暮らしたことなんてないし……あ、公園。あーいう公園も近くにはなかったなぁ……」


前だけじゃなく、左右の道を忙しなく見ながらそう感想を漏らすと拓真さんが微笑んだ


こういう所で拓真さんは育ったのか

特にど田舎って感じじゃないけど、ビルなんて建ってないし
高い建物なんてたまーーーに見える10階もないようなマンションぐらい


いい所だな

たまに見る住人らしき人たちも見るからにいい人そうだし

俺の育ったところは……まぁ、明らかにこんなんじゃなかった

子供の俺と比べて優越感得るような大人もいたぐらいだし

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