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泣かぬ鼠が身を焦がす

第6章 病に薬なし


すると茜さんからも俺に近づいてきて、耳打ちされた


「ノラ、これお粥。後で社長に食べさせてあげて」


見てみると、いつも通りの俺の朝食に加えて1人用の小さな土鍋が用意されている


「わかった。作るの早いね」
「ノラ用に炊いてたお米増やしただけだからね。簡単」
「へぇ。でもすごいよ」


俺が暖かそうなご飯を眺めながら褒めると茜さんは顔を緩めて「えへへ、ありがと」とお礼を言った


「じゃあ、またね」
「うん」
「失礼致しました」


最初に会った時みたいに堅い挨拶をした茜さんが部屋から出て行くと、杉田さんの診察もちょうど終わったところだった


「過労による風邪ですね。しっかりとご飯を召し上がって、休んでいただければすぐに治ります」


おぉ、良かった

過労とか、案の定って感じだけど
大きい病気とかじゃなくて良かった


「薬はこれと、これで。食後にお飲みください」


お医者さんが薬を俺に渡して杉田さんがお礼を言うと、お医者さんは「お大事になさって下さい」と言い残して部屋から出て行った


「……」
「……」


そして再び訪れる沈黙


「あ、お腹……空いてる?茜さんがお粥作ってくれたんだけど」

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