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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


「準備終わったか?」
「うん」
「よし、じゃあ行くぞ」


歩き出した拓真さんもいつもより大きめの鞄を持ってる

なんか旅行感あるなー


誰もいない社内を歩いて、警備員さんに挨拶して、地下にある駐車場に着いた


考えてみれば俺駐車場来るの初めてだ
ヒトミさんのところに行く時とか拓真さんと2人で出掛ける時は運転手さんが車入り口まで持って来てくれてたもんなぁ

俺って結構御坊ちゃまじゃん


「純? ほら、鞄」
「ん」


トランクを開けて待っててくれた拓真さんに鞄を渡して、助手席に乗り込む

少し遅れて拓真さんが運転席に乗り込んだ

エンジンがかかって、聞くだけでいい車だってわかる重低音が響く


「久しぶりだな。純とこうして2人で出掛けるのは」
「そうだね。運転は? 俺と出かけた時以来する機会あったの?」
「なかったな。久しぶりだ」


おいおいそれって


「……安全運転でお願いしまーす」


拓真さんが俺の不安そうな声にくす、と小さく笑って、車が滑るように動き出した


「どこ行くかは教えてくれないんでしょ?」
「あぁ。内緒だ」
「ふーん」


気の無い返事をしながら前みたいに拓真さんから目を逸らすって目的じゃなくて、単純に面白くて外を眺める

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