
泣かぬ鼠が身を焦がす
第34章 旅は道連れ
「働いてない俺が言うのもなんだけど、こういう平日にみんなが頑張って働いてるのを横目に遊びに行くのってちょっと優越感だよね」
目の前を通り過ぎていくのはオフィス街を歩き回るスーツ姿の人達ばっかり
すると、拓真さんは「そうだな」と同意した後
「だが、純は働いてない訳じゃないだろう」
と言う
予想外の答えに俺は視線を窓の外から拓真さんに移して反論した
「は? 俺完全にニートじゃん。なんもしてないよ」
ヒトミさんのとこでやってたアルバイトは短期でやらせて貰ってただけだからとっくに終わってるし
すると拓真さんはなんでもないようない顔で
「俺を癒す仕事、してるだろう」
と言ってのけた
「!?」
拓真さんを癒す仕事……!?
な、にを言ってるんだこの人は!
恥ずかしげもなく……!!!
俺は熱くなってきた顔を隠すようにまた窓の外に視線を戻す
「何それ! それなら給料貰わなきゃじゃん!」
あーーもう
拓真さん最近変なことばっかりする
熱い熱い
「何言ってるんだ。家賃なしでビルの最上階に住めて、三食食事付き。出掛ける時には運転手まで付くなんて、こんな良い条件の働き口はないぞ」
