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泣かぬ鼠が身を焦がす

第34章 旅は道連れ


俺の身体から力が抜けると、拓真さんは漸くキスをやめてくれる

そして満足そうに俺を腕の中に閉じ込めた


お、俺のが先に起きてたのに
なんでこんなことに……


軽く息もあがって顔も熱い俺はされるがまま拓真さんの腕の中に収まっている

すると拓真さんが声を掛けてきた


「純」
「……なんだよ」


俺はちょっと拗ね気味に返事をする


「昨日言ったこと、覚えてるか?」
「昨日……」


何か言ってたっけ?
……あ……


「旅行の話? 社員さんたちみんな旅行行ってるんだよね」
「あぁ。だから、俺と純も別のところへ旅行に行こうとも言っただろう」


……言ってたかも


「ほんとに行くの?」
「当たり前だ。言ったことはちゃんとする。だから準備するぞ」
「わか、った」


旅行……
旅行だって

ちょっと楽しみだな
いつぶりだろう


と思ってちょっとワクワクしたんだけど、準備しろと言った張本人が何でか全く動かない


「拓真さん?」
「何だ」
「準備するんじゃないの?」
「あぁ」
「……」
「……」


え、なにこれ
俺の話が通じてないの


「なんで腕離してくれないんだよ。早く動かないとお昼になっちゃうよ」

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