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泣かぬ鼠が身を焦がす

第32章 愛してその醜を忘るる


「純? 起きてるのか?」
「……」


明らかに寝てる人間の行動じゃないし、腕に結構力入ってるから起きてるのは明らか


「純?」
「……」


だけど俺は頑なに拓真さんの呼びかけに返事をしない

すると拓真さんは俺の背中を撫でながら気遣わしげな声を掛けてきた


「まだあんまり刺激を与えない方がいいんじゃないのか?」
「……」


ずっと無視し続けるのは流石に態度悪すぎるかな……


拓真さんはまだ俺の背中をゆっくり撫でてくれてて、俺が無視してるのも構わずに俺が返事をするのを待っているみたいに黙ったまま


「……今日はこういう気分なんだよ」
「もう腹はいいのか?」
「…………ん……いいって言った……」


俺の最後の言葉はすごく小さくなったけど、拓真さんにはちゃんと聞こえたみたいで


「そうか」


って嬉しそうな声が上から降ってきた

そして


「!」


顔が埋もれるぐらいしっかり抱きしめ直された


やばい
苦しい

抱き締められて息が出来ないって意味じゃなくて、なんか心臓が締め付けられて苦しい

つまり、キュン死しそう


拓真さんの匂いをちゃんと感じたのも久しぶりで、脳みそにじんと染み渡る

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