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泣かぬ鼠が身を焦がす

第32章 愛してその醜を忘るる


「そうか、良かったな」
「ご心配おかけしました」


お礼の1つでも言えば良かったな、なんて言ってから後悔する


「だから明日からは普通の食事でいいよ」


でも、俺がそう言うと拓真さんは少し厳しい表情を浮かべた


「いや、暫くは抑えたままの食事にしよう。急に元に戻してまた再発しても困るだろう」


本当に心配してくれたんだなぁ


「……うん」


俺はまぁそれでいっか、と素直に頷いた

それからいつも通り食事をして、食べ終わると拓真さんが


「先に風呂に入るか? それとも俺の後でいいか?」


と聞いてきた


「あー……」


え、と
一緒に入りたいなーなんて思ってたんだけど……

でも言うの恥ずかしくなっちゃった……な……


「さ、先に入る」
「なら入ってこい。あんまり長湯するなよ」
「……うん……」


なんか思い通りにいかないな

いや俺が素直になれば全部解決なんだってことぐらいわかってるんだけど

俺にはまだちょっと難しい……


悶々とした感情を抱えたまま、俺は予定とは違って1人で風呂に入った

ゆっくり入る意味もないから早めに上がって、交代で入った拓真さんが上がってくるのを待つ

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