
泣かぬ鼠が身を焦がす
第32章 愛してその醜を忘るる
そして、その少し後に扉がゆっくりと開いた
「! 拓真さんおかえり」
「ただいま」
そう言って微笑みかけてくれる顔の優しさに、俺はダイエット成功したことをポロっと言ってしまいそうになる
いや違うだめだ
この嬉しさは共有しちゃダメなやつ!
「晩飯にしよう」
「うん」
拓真さんが持ってきたお盆をテーブルに置いて、俺もそっちに移動する
そして、席に着いた俺を見て拓真さんは言った
「今日はまだ風呂に入っていないのか?」
久しぶりに一緒に入ろうと思って
なんて、俺の口から素直に出てくる筈もなく
「うん。ドラマ録画してたやつに夢中になっちゃって、入るの忘れてた」
と誤魔化してしまった
「そうか」
「そんなことより食べよ」
俺が話題を逸らしてご飯を食べようとすると、食事を見て気づく
あ、そういえば俺お腹痛い設定だったんだっけ
まだご飯すごい少なめ
治ったって言った方がいいかな
俺を気遣った食事に胸を痛めつつ、俺は拓真さんに笑顔を向ける
「ねぇ拓真さん俺お腹痛いの治ったよ」
すると、拓真さんは驚いたような顔をしつつも安心した顔になった
