テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第25章 合縁奇縁


「……それでも、問題ありません……」
「?」
「……あの人に……私の主人に、どうにかして貰います……」


俺は盛大に溜息を吐きたくなった


またそれかよ


「それでいいんですか」
「……もちろんです。あの人のものは、妻である私のものでもありますから」


その理論でいうと
あんたのものもあいつのものだけどな

……俺は母さんのじゃないんだから、あいつのものにはならないからな


母さんの脅しに拓真さんは考え込むように黙ってしまう

それを怯えていると勘違いしたのか、母さんが拓真さんを睨みつけた


「貴方が私の要望に応じないのであれば、主人に言いつけて力づくでも純を連れて行きます」
「……」
「そこまでしてあんたらが俺を連れて帰りたい理由はなんなの?」


今までだって、探そうと思えば探せたはずなのにそうしなかったのは理由があるんじゃないのか

それとも、この前久しぶりに会って何か思い出したっての?


俺の質問に母さんは俺を真っ直ぐに見た


「純はいつだって私の息子なんだから、一緒に暮らしたいと思うのは普通の考えなんじゃないの?」
「今まで放っといたくせに?」
「さっき言ったでしょう。ずっと探してた。でも見つからなかったのよ」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ