
泣かぬ鼠が身を焦がす
第25章 合縁奇縁
しくしく涙を流す母親に、普通なら同情ぐらいするんだろう
でも今の俺の頭に浮かんだのは、苛つきだけだった
「許さない。あんただけは、絶対に許さない」
俺の強い言い方に、拓真さんが少しだけ意外そうな顔をしている
こんなに怒りを露わにした俺を見るのが初めてだったからだろうか
「純……私だって……あの時、必死だったのよ…………ずっと探してて、やっと……見つけたの…………」
手で顔を覆って、人目も憚らず泣き出す母さん
その姿は完全にか弱い女性そのもの
俺の人生を売ってあの人と結婚したとは思えない
そんな母さんに伊藤さんが気遣わしげな顔をした
……優しいね、伊藤さん
俺は
自分の母親なのに、全く何とも感じないよ
「お願い、純。私に、やり直させて……」
「……」
どの口がそう言うんだ
と、そこでそれまで俺と母さんのやり取りを見守っていた拓真さんが口を出した
「親子だと仰いましたが、国籍もない彼を親子なんてどこにも言えないでしょう」
「……DNA鑑定すればいいじゃない」
「こちらが大人しく検査に応じるとお思いですか?」
「……っ」
母さんが膝の上で両手を握りしめた
