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泣かぬ鼠が身を焦がす

第25章 合縁奇縁


隣にいた拓真さんも気持ちは同じでいてくれたらしく、母さんを強い力で見ている


「……」
「……」
「……」


挨拶の後、3人とも沈黙してしまって重たい空気が続いた


暫くして沈黙を破ったのは母さん


「純は私が連れて帰ります。数年前に突然家出をしてしまって、ずっと探していたんです」


そんな嘘
通じるわけないだろ


という俺の気持ちを、拓真さんが代弁してくれた


「彼の事情は全て聞いています。そのような嘘はやめて下さい」
「……!」


母さんが驚いた顔をする

それもそうだろう
あいつの犯した犯罪だって、拓真さんには伝わってるってことだから


「……それでも私はその子の母親です。その子を育てる権利と義務があります」


その言葉に俺は露骨に舌打ちをした

母さんと拓真さんの視線が俺へ移る


「よくそんなこと言えるな。俺の国籍消してまであいつと……金と結婚したんだろ。今更母親ぶるなよ。気持ち悪い」


辛辣な言い方に、母さんが眉を吊り上げた


「母親に向かってその言い方はなんなの!? 気持ち悪いだなんて、言わないで!!!!」


でも、それよりも怒ったのは俺の方

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