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泣かぬ鼠が身を焦がす

第25章 合縁奇縁




朝目が覚めると、思い返せば昨日の記憶がちゃんとあって
俺は寝る前と同じように拓真さんの腕につつまれていた


夢じゃなかった

ちゃんと、夢じゃなかった


昨日のことが事実だったってことをしっかり確認できて、嬉しさのあまり顔がにやける

そしたら俺が動いて目が覚めてしまったらしい拓真さんが俺がいることを手で探って確かめた


「ん……純? 起きたのか……?」
「起こしちゃった? ごめん。おはよ」
「おはよう」


拓真さんの目が開いて、薄く微笑む


よかった
やっぱりいつもの朝だ


それからちょっとダラダラしてから起き上がって、拓真さんが持ってきてくれたご飯を一緒に食べようとした


「食べるか」
「うん。いただきまーす」
「いただきます」


その時、慌ただしく扉がノックされた


「社長!! 大変です!!!」


拓真さんの返事も待たずに開かれた扉からは伊藤さんが入ってくる


「静? 随分朝早いな。何かあったのか?」


俺たちのところまでやってきた伊藤さんはどれだけ焦ってるんだってぐらいゼェゼェ息してて、話をするより前に息を整える必要があった


「っはぁ、は……す、すみません……」
「そんなに急ぐほど何かあったのか?」

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