
泣かぬ鼠が身を焦がす
第13章 正直の心より
不安が過ぎって、いよいよ俺の目から涙が溢れそうになった時
「!」
杉田さんは俺を苦しいぐらい強く抱き締めた
「それで、逃げてきたのか?」
「……」
「純?」
違う
違うんだ
けど
「話すから、もう少しだけ……」
「あぁ」
思い出すのは、あまりにキツイ
俺が今本当はこの世に存在してないこと
考えたくない
暫く抱き締めててもらって
俺が落ち着いてから少し身動ぎすると、杉田さんの腕が話せるぐらい緩んだ
「俺は、逃げたんじゃない。追い出されたんだよ」
「追い出された? どうして?」
「…………あいつに……」
「……」
俺が詰まっても杉田さんはじっと待っていてくれる
「あいつに、抱かれてたのが……母親にバレたから……」
「抱かれてた?」
「………うん」
今でも鮮明に思い出せる
忌々しい記憶
『お前が断ったら、母親にはこの世の地獄のような苦しみを与えよう。お前が受け入れるなら、逆になんでも与える』
母さんをネタに脅された俺に、受け入れる以外の選択肢はなくて
毎日、毎日……
「ーーーそれである日、最中に母さんが部屋に入ってきて……それで……」
