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泣かぬ鼠が身を焦がす

第13章 正直の心より


まぁ驚くよね
俺だってびっくりしたよ

随分年上のおっさん連れてきたと思ったら総理大臣なんだもん

まぁ、紹介された当時はまだ次期総理って言われてる党首だったけどね


驚いた顔の杉田さんは思案顔になって当時のニュースを思い出しているみたい


「いや、でもあの時連れ子がいるなんて報道はなかったぞ?」


記憶力いいね、杉田さん


「うん。俺のことは全く報道されず、母さんがバツイチだってことも伏せられてたよ」
「?」


不思議そうな顔
ちょっと面白い

けど杉田さん、ちゃんと抱き締めてて
消えそう

俺が


「そもそも母さんとあいつの戸籍に、俺の名前はない。俺の戸籍は、結婚したその時に削除されたんだから」
「……戸籍が?」
「だって、体裁悪いでしょ? 次期総理って言われてた人の結婚相手がバツイチの子持ちなんて」


へらへらしてるけど
今すぐにでも泣いてしまいそうで

泣いたらきっと、そのまま溶けて
なくなってしまいそうだった


「だから俺はとっくに死んだ事になってて、母さんとあいつが結婚した後はずっと部屋に閉じ込められてた」
「……」


もっと強く抱き締めてて


そう思って杉田さんの胸に顔を埋めるけど、杉田さんの腕に入る力はさっきから変わらないまま

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