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泣かぬ鼠が身を焦がす

第12章 盲目


優しい口調
優しい笑顔


でもその口で、顔で紡ぐ言葉は嘘ばっかりなんだろう


捨てられたくない
杉田さんにだけは

飽きられても、側にいたい


「う、ぅ……く、ぅぅ……」
「ノラどうしたの? 泣いてる?」


俺が遂に啜り泣く声を我慢できなくなると、藤本が表面だけ心配そうな顔をして俺に手を伸ばしてきた


やめろ
触るな

俺に構うな


もういいんだって




杉田さん以外に触られたりしたくないんだよ


「さ……っ、わる、な……っ!!!」


俺が声を振り絞り、藤本を睨みつけたその瞬間

部屋の唯一の扉が勢いよく開いた
扉は壁に当たって凄まじい音を立てる

けど俺には藤本が影になって入ってきた人を見る事は出来ない


「……来たんだ?」


低い声でそう言った藤本はさっきの表情を消して振り返った


「当たり前だろ」


息切れしたみたいな
疲れ切った声

でもそれは俺がずっと待ち望んでた声だ


杉田さん……!!!!


「あーあ、見つかっちゃったか」
「議員が警察に掛け合って捜査を優先させてくれたんだよ」
「チッ、あのクソジジイ。使えねぇな」
「……」


小さく呟いた藤本の暴言に、杉田さんがどんな顔をしたのかは俺には見えない

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