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泣かぬ鼠が身を焦がす

第12章 盲目


「ノラを返してもらうぞ」


冷静に告げられた杉田さんの言葉に、藤本が噛み付く


「気に入らないな、あんた。ノラは俺の玩具なの。それにノラも、あんたみたいに期待させるだけさせて中途半端な事してる奴に飼われるぐらいなら、確実に遊びってわかってる俺の方が良いだろ」


そう言って藤本は俺の隣までやってきた

そのお陰で今日初の杉田さんの顔が見えるようになる


中途半端なこと……
やっぱり、はぐらかされたのかな

俺、都合いい奴になってる?


心の中は不安でいっぱいで、俺は濡れた目でぼやける杉田さんを見つめた

杉田さんは俺ではなくて俺より手前の床を見ていて、視線がこっちにはない


杉田さん……?


そして、少しの間黙った杉田さんは


「中途半端、か……」


と呟いて
顔を上げた


「俺はーーー」


話し出した声は凛と張り詰めていて、俺の耳に疑いようもない情報としてしっかりと届く


「ノラが好きだ。ノラが俺のことどう思っていようと構わない。これからどれだけかかっても口説いてやるから、今お前なんかに邪魔させるわけにはいかない」


杉田さんが
俺のこと好きって

言った

好き、だって


死にそうだ

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