
泣かぬ鼠が身を焦がす
第12章 盲目
「そうか」
「議員との話し合いはいかがでしたか?」
「俺をあそこに留めておくための時間稼ぎだったんだろう。無駄話ばかりだった」
「左様ですか」
エレベーターを上りながら、思い出したことを静に聞く
「ところで、いつ侵入されたかはわかったのか?」
「はい。私達が対策用の緊急会議を開いている間だったようで、この階に誰もいない時間だったようです。下の警備を抜けられた理由はわかっていませんが、警備の者に通した者がいると思われます。私のミスです。申し訳御座いませんでした」
そうか、会議中か
それは気づかないな
それでなくとも普段は秘書室に篭っていてフロアに出ていないことも多い
とにかく
「警備会社に連絡を取って犯人を割らせてくれ。それが出来なければ委託会社を変える」
「かしこまりました」
あぁくそ
息がしにくいな
俺の心臓がずっと、今までに経験したこともないほど早く動いているせいだ
……いや、あるな
あった
ノラを始めて抱いた時以来だ
抱く感情は全く違うが
思い出して、胸がひどく痛む
「社長!伊藤さん!警察の方からご連絡です!場所がわかったそうです」
「!」
どうか、無事でいて欲しい
それしか今は考えられない
