テキストサイズ

泣かぬ鼠が身を焦がす

第12章 盲目


「今日は天気がいいな」


何故か上機嫌な様子で俺に世間話を振ってくる藤本議員に、しかめ面で答える


「そうですね」
「こういう天気のいい日はゴルフがしたくなる。君はゴルフするのか?」
「いえ。興味もありません」


バッサリと話を切っても、「そうか。それは残念だ」と気にしていない様子

すると高い声で「失礼いたします」と声がして、お盆にお茶と茶菓子を乗せて女性が入ってきた

再び「失礼いたします」と声をかけられ、俺の前にお茶と茶菓子を置く

藤本議員の前にも同じようにすると、その女性は下がっていった


「さ、熱いうちに飲みなさい」
「……」


俺がお茶に口をつけると、藤本議員はまた世間話を再開する

その度に「そうですか」や「わかりません」と適当な返答をして話を引き延ばされるのを防ぐが


「ほう、そうかそうか」


と藤本議員話は常に楽しげな表情をしていた


何か変だな
何だ?


「ところでーー」
「世間話はやめにして、本題に入ってくれませんか。俺がここに来てから何分経ったと思っている? いい加減孫を連れてこい」
「もう少しこの老人の話には付き合ってくれないのか?」


いい加減にしろ、と言いかけたその時俺の携帯が震えた

ストーリーメニュー

TOPTOPへ